Ⅴ-2-6 「GOT・GPT」の評価および対策
GOT・GPTは、肝機能検査のなかでもよく知られているものです。GOT・GPTともにトランスアミナーぜと呼ばれる酵素の仲間で、アミノ酸をつくる上で重要な働きをしています。また、細胞の壊死や炎症などによって血液中に出るため、血液中のGOT・GPT 濃度を測定し、肝臓・胆道系・心筋・筋肉などの疾患が確認できます。
評価の基準は、GOTは10~40 IU/r、GPTは5~40 IU/rが正常域となります。アルコール類の過剰摂取・肥満・運動直後などによっても数値は上昇します。急性肝炎では1,000 IU/r以上を示し、進行性の慢性肝炎は異常高値を示します。GOT・GPTは、それぞれの値だけでなく、比率やバランスが重要です。
GOT・GPTの双方が異常値を示した場合は「GOT<GPT」であれば肝・胆道系疾患、逆に「GOT>GPT」であれば、心筋・筋肉疾患が疑われます。高値の場合には、次のような対策が基本となります。
(1) 飲酒はほどほどに、週に1日以上は禁酒すること
(2) 糖質が過剰摂取にならないよう留意すること
(3) 脂質の少ないたんぱく質を摂取するよう留意すること
(4) 定期的に血液検査を行い経過を観察すること
Ⅴ-2-7 「γ- GTP」の評価および対策
γ- GTP検査は、アルコール性肝障害を見つけだす検査として知られています。γ- GTPは、たんぱく質を分解する酵素で、通常は腎臓に最も多く、膵臓・肝臓・脾臓・小腸などに多いとされています。細胞に障害が発生すると、血液中に出てきます。しかし、腎臓に障害が起きた場合には、尿に出るため、血液中の増加は、肝臓・膵臓・胆道系疾患の問題が考えられます。とくにアルコール性肝障害のある場合には、高値を示します。
評価の目安は、女性30 IU/r(男性70 IU/r)が正常域とされています。長期間の飲酒経験者は、とくに肝機能に異常がない場合でも、高値を示すことが多くみられます。したがって、アルコール性肝障害の指標は、100 IU/r以上が目安となります。高値の場合の基本的な対策は次の通りです。
(1) 指示された日数飲酒を控え、γ- GTPの再検査を受けること
(2) 週に2~3日以上は休肝日とすること
(3) 飲酒量は、食事がおいしく食べられる程度に抑えること
(4) 定期的に血液検査を行い経過を観察すること
Ⅴ-2-8 「尿素窒素」の評価および対策
血液中の尿素窒素の濃度を測定し、肝機能および腎機能の働きを確認します。一般に尿素窒素検査は、クレアチニンの濃度検査を併用して、腎機能を確認します。正常域を超えて高値が継続した場合は、クレアチニン濃度が高値であれば腎疾患、正常域であれば肝疾患の疑いが想定されます。
評価の基準は、9~20mg/dlで正常域、20~30mg/dlで高尿素窒素血症境界域、30mg/dl以上で高尿素窒素血症とされます。発熱時や運動の直後、検査直前のたんぱく質の過剰摂取などは、一過性の高値が測定されることがあります。30mg/dl以上の高値の場合の対策は、次の通りです。
(1) たんぱく質が過剰摂取とならないよう留意すること
(2) 水分を充分にとること
(3) 塩分の摂取を控えめにすること
(4) 定期的に血液検査を行い経過を観察すること