Ⅲ-6-2-2 栄養成分別食事管理
適正なエネルギーの段階に合わせた、食品群別の摂取量の目安については、各論で詳細に述べます。
栄養成分別食事管理には、
(1) エネルギーコントロール食
(2) たんぱく質コントロール食
(3) 脂質コントロール食
(4) 減塩食
(5) 流動食、軟食、易消化食(消化しやすい食事の総称)
などがあります。ここでは、栄養成分別の食事管理のなかで、とくに、肥満の体質改善の中核的な要素となる「エネルギーコントロール食」について学びます。
「エネルギーコントロール食」とは、1日の総摂取エネルギー量を調節したものです。そして設定された総摂取エネルギー量の範囲内で各栄養素の必要量を確保していくものです。各段階に設定された総摂取エネルギー量の範囲内での「バランス食」ということができます。エネルギーコントロール食には、消費エネルギー量に対し摂取量が下回る「低エネルギー食」と、その逆の「高エネルギー食」の2つがあります。ここでは、低エネルギー食を中心に述べます。
「低エネルギー食」とは、摂取エネルギー量の制限が主要な目的となる疾患に用いられるものです。例えば、脂質の代謝異常で起きる肥満・高脂血症・脂肪肝などの治療は、低エネルギー食により、体内でのエネルギー不足状態をつくり出し、体脂肪の分解を進めることによって、脂質代謝の改善をめざそうとするものです。
脂質代謝の改善による体重の減少は、循環血液量を減少させるので、心臓の負担が軽減されます。同時に末梢の血管の抵抗性も低下します。これらの効果は、狭心症や心筋梗塞の危険因子である動脈硬化を予防することとなります。とくに、肥満と合併した高血圧や心臓病に対しては、減塩も重要ですが、体重減少のほうがより効果的とされています。当然、過食が原因となる糖尿病や高尿酸血症・痛風にも有効です。
エネルギーコントロール食の指導の要点は、空腹感との戦いが重要になります。したがって、食物繊維の摂取を利用することによって量的配慮をします。また、充分な咀嚼(そしゃく)によって、食欲の抑制をはかります。さらに、同じ食品群のなかでも低エネルギー食品を選択し、各栄養素のバランスに留意します。詳細については、各論においてエネルギー計算を簡略化した「四群点数法」の導入などを通して解説します。
Ⅲ-6-3 心の体質改善
心の体質改善とは、物事に対する見方・考え方、気持ちの表し方・伝え方、身体の使い方・振る舞い方などについて、本物の自分を生きるため、癖や歪みを修正することです。いわゆる「思考・感情・行動」など、バランスのとれた性格や自己像の修正作業と考えられます。
このような修正・改善には、「援助・対応・訓練」の3つが基本となります。クライエントに対して、
(1) いま必要な援助は、どのようなことが考えられるか?
(2) いま必要な対応は、どのようなことが考えられるか?
(3) いま必要な訓練は、どのようなことが考えられるか?
などについて、検査や面接を通して、客観的立場から援助しようとするものです。
具体的には、
(1) さまざまな精神心理検査による心理状況・状態などの評価や査定
(2) 基本的な対応・面接・分析などの技術
(3) 自己主張や問題解決のスキル獲得のための訓練
などがあげられます。
総合的健康美学論では、このように3つの方向から多角的・総合的な心理療法システムを構築し、心身ともにバランスのとれた、自己美や自己像の形成をめざしています。そしてこれらの体系を、「総合的心理療法とカウンセリングシステム(SPC療法;Synthesis Psychotherapy & Counselling System)と呼んでいます。(SPC療法の詳細については、各論「心理編」を参照してください)