Ⅱ-1-6-7 皮下脂肪
皮下脂肪の付き方は、栄養状態・運動量・環境や気候・性別・遺伝的要因などによって異なります。例えば運動量からみると、肉体的な仕事よりも、事務的な仕事をしている場合のほうが、皮下脂肪が付きやすい傾向があります。環境や季節的な要因からみると、夏よりも冬場のほうが肥満傾向が強くなり、温暖地に在住の人よりも、寒冷地に在住の人のほうが皮下脂肪が付きやすい傾向があります。これは、体温を一定に保とうとする作用が働いているためです。
一般的に皮下脂肪は、通常あまり動かさない(運動量の少ない)部位に付きやすいという傾向があります。また、身体の中心から離れるほど付きにくいとされています。男性と女性ではホルモンの関係から、脂肪のつく部位と量が異なります。男性の場合は、上半身中心型が圧倒的に多く、腹部・ウエスト・背中・上腕後部などが主な部位です。女性の場合は、下半身中心型が多く、大臀部・腰回り・下腹部・太もも・バストなどが主な部位です。施術の技術に、食事療法・運動療法・心理療法などを加え、総合的減量計画(総合的健美計画)が実施されると、その効果は、痩身原則に従って現われます。
痩身原則とは、「脂肪は絶対量の多い部分から徐々に減少する」というものです。したがって、必ずしも、希望部位から効果が現われるとは限りません。むしろ、落としたくない部位に痩身効果が現われることがあります。例えば、二重あごの脂肪が落ちる前に、落としたくないバストが先に落ちてしまうような場合です。総合的な効果が現われる過程では、よくあることです。
皮下脂肪とのつきあいは、バレエダンサーのような特別な世界をめざすのでなければ、時間をかけ、本来の健康美を目標とすべきです。体脂肪は、女性ホルモンと密接な関係があります。体脂肪率が15%を下回ると、生理異常や貧血などの危険性が急速に高まります。
また、無理、むらなダイエットや、その失敗から何度もダイエットを繰り返すような場合には、想像以上に内臓や神経系に負担がかかっていることに留意すべきです。また、骨の荷重耐性が低下し、骨粗鬆症の重大な原因となります。過重耐性とは、骨の太さ、密度およびこれらを支える関節軟骨の強度などをいいます。骨粗鬆症の女性が、大腿部頸部骨折によって、「寝たきり」になるケースは、すべての「寝たきり」の発生事由の第2の要因となっています。
Ⅱ-1-6-8 月経と脂肪貯蔵率
標準体重の女性の平均脂肪貯蔵率23%前後の人が、激しいスポーツやトレーニングをすることによって、15~17%を下回る時点で、月経不順が起こりやすくなります。逆に、マラソン選手などが、トレーニング内容を軽減したり中止することによって、脂肪貯蔵率が15~17%を上回る時点で正常な月経へと回復することが知られています。
また、拒食症(摂食障害)の判定基準の1つが、標準体重の80%を下回ることがあげられます。この状態では脂肪貯蔵率も17%を下回ることが多く、ほとんどのケースに月経不順や停止状態、貧血などがみられます。