Ⅳ-5-2-5 過酸化脂質とグルタチオン
不飽和脂肪酸が酸化すると、老化物質といわれる過酸化脂質となり、がんや動脈硬化の原因となることはすでに述べました。また不飽和脂肪酸の摂取時には、不飽和脂肪酸の酸化を防ぐために、ビタミンEおよびビタミンCなどの抗酸化物質を摂取することが重要です。
しかし、ひとたび過酸化脂質へと変貌してしまった場合には、グルタチオンが登場します。グルタチオンは、過酸化脂質に電子を与えて、その毒性を消去します。グルタチオンは、このとき酸化したことになります。酸化されたグルタチオンは、グルタチオン還元酵素によって再び還元(復帰)され、過酸化脂質に立ち向かうことができます。過酸化脂質の分解を、背後から促進するのが、グルタチオンぺルオキシターゼです。
Ⅳ-5-2-6 たんぱく質とスカベンジャー
たんぱく質は、私たちが活動するための重要なエネルギー源です。同時に、脳や筋肉、血液などを形成する素材として、人体の根幹的な役割も担っています。さらに、各種のホルモンや酵素類のもととなる栄養素としての働きも重要です。
代表的なスカベンジャーとして知られる SOD、カタラーゼ、グルタチオンぺルオキシターゼ、トランスフェリン(金属結合タンパク)、セルロプラスミン(金属結合タンパク)などの酵素は、すべてたんぱく質が主成分です。
ビタミンのスカベンジャーとしてナンバーワンのビタミン E の作用にも、たんぱく質が重要な働きをしています。卵のたんぱく質に含まれるシステインは、酸化されたビタミン E を還元して、活性を復活させるビタミン C と同様の働きをしています。
このようにたんぱく質は、主要な栄養素でありながら、それ自体がスカベンジャーとしての主役を演じ、ときには脇役として後方支援をする万能選手といえます。
たんぱく質を構成する20種類のアミノ酸のなかで、体内で合成することができないアミノ酸を「必須アノミ酸」といいます。この必須アノミ酸を多く含む、良質な理想的なたんぱく質の代表が「鶏卵」です。
成人の1日摂取量の目標は、それぞれ女性 60 g、男性 70 g です。これは、体重1kg 当たり1g 程度となります。1日の総エネルギー量の15%をたんぱく質で摂取し、動物性たんぱく質と植物性たんぱく質の同量摂取が理想的とされています。
注)
「必須アミノ酸」には、①トリプトファン、②フェニルアラニン、③リジン、
④スレオニン、⑤メチオニン、⑥ロイシン、⑦イソロイシン、⑧バリン、
⑨ヒスチジン(子供のみ)などがあります。