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Ⅳ 健康美を支える新たな視点 「酸化予防のためのアプローチ」
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Ⅱ章およびⅢ章で健康美阻害要因としての「肥満」と「体質改善」について述べました。ここでは、体質改善を通して肥満の解消を進める上での新たな視点として「活性酸素」を取り上げます。
酸化作用が人体に及ぼす影響については、1980年代に入り指摘されるようになってきました。なかでも「活性酸素(Active Oxygen)」は、酸化作用の代表的課題として、医学会をはじめとする関連諸学会でとくに脚光を浴びている分野です。
最近ではがん・心臓病・脳卒中・動脈硬化・痴呆症など、老化に伴う成人病や生活習慣病から、シミやシワなどの皮膚の障害にいたるまで、「活性酸素」が広汎に関係していることが明らかになってきました。
病気や障害を予防し、健康美を維持するためには、これまでの運動や栄養、生活習慣などの知識や情報だけでは不充分といえます。体内での「活性酸素」の影響や特性を理解し、できる限り活性酸素の発生を抑えるための、生活習慣が必要となります。とくに、体内に抗酸化物質を増加させ、健康維持のための積極的な抗酸化システムを構築するための「新たな視点」が重要な課題となります。
Ⅳ-1 活性酸素発生のメカニズム
鉄が酸素によって錆びついてしまうように、私たちの身体も酸化することによって老化が進行します。私たちの身体の酸化に大きく関わっている主役的存在が「活性酸素」と呼ばれているものです。活性酸素発生のメカニズムを説明するためには、酸素分子や酸素原子の構造について理解する必要があります。
一般に陽子と中性子からなる原子は、原子核とその周りの軌道上にある電子によって構成されています。多くの電子は原子核の周りを同一軌道で2個ずつ対になって回っています。しかし、なかには同一軌道に電子が1個しかないものがあり、不対電子と呼ばれています。不対電子を持っている原子や分子は、非常に不安定なためフリーラジカル(Free Radical)と呼ばれています。フリーラジカルは、安定している原子や分子から、電子を奪い取って対になろうとする性質を持っています。
酸素は、酸素原子(O)が2個結びついて酸素分子(O2)を構成しています。酸素原子の周りの軌道上には不対電子が2個あり、他の分子や原子から電子を奪って安定しようとしています。奪い取った電子が軌道上に落ち着いた位置によって、発生する活性酸素の名称やその性格が異なります。
注)
活性酸素発生のメカニズムについては、実際は非常に複雑な発生過程なため、ここではできる限り簡明な解説にとどめました。その詳細については、『活性酸素・フリーラジカルのすべて』(丸善株式会社刊)、『活性酸素』(共立出版)などをご参照ください。