Ⅲ-2 経脈施術法
東洋思想に基づく東洋医学では、われわれの身体の中に「気(き)」、「血(けつ)」、「水(すい)」と呼ばれる3つの流れがあるとされています。これらの流れが停滞することによって、体調がくずれたり、病気にかかったりすると考えられています。
「気」とは、生命活動のエネルギーであり、「血」は、血液やリンパ液など体液の流れや循環を指します。また、「水」とは、水分の代謝を表しています。病気の「気」は、「邪気」の意味を表しています。つまり、身体に悪影響を与えるマイナスの生命活動のエネルギーといえます。東洋医学での病気とは、いわゆる病気だけではなく、身体のむくみや冷え、腰痛や肩こり、だるさや痛み、さらに精神的なイライラや不安など、あらゆる症状を包含しています。
「気」と呼ばれる生命活動のエネルギーの通り道を「経脈(けいみゃく)」といいます。経脈には600を超える「経穴(けいけつ)」があります。一般には、「ツボ」といわれるもので、経脈中の重要ポイントを表しています。電車に例えると、「経脈」は線路を意味し、「経穴(ツボ)」は主要な駅を表しています。そして「気(エネルギー)」は、目的地へ向かう電車と考えれば理解しやすいと思われます。
このように経脈に沿って、要所の経穴を施術することによって、「気」、「血」、「水」の流れを整える一連の施術システム(Operation System)を「経脈施術法」と呼んでいます。
東洋医学では、内臓機能を六臓六腑に分類し、これらの臓腑は、それぞれの経脈系統を構成しています。したがって経脈には、全身に12の系統があります。
六臓に対応する経絡は、
(1) 「肺経(はいけい)」
(2) 「脾経(ひけい)」
(3) 「心経(しんけい)」
(4) 「腎経(じんけい)」
(5) 「心包経(しんぽうけい)」
(6) 「肝経(かんけい)」
などがあげられます。
六腑に対応する経絡は、
(1) 「大腸経(だいちょうけい)」
(2) 「胃経(いけい)」
(3) 「小腸経(しょうちょうけい)」
(4) 「膀胱経(ぼうこうけい)」
(5) 「三焦経(さんしょうけい)」
(6) 「胆経(たんけい)」
などがあげられます。
さらに六臓六腑の経脈の流れを相互に調整するためのものとして「督脈(とくみゃく)」と「任脈(にんみゃく)」の2つの経脈があります。合計すると14の経絡になるので、「正経十四経」と呼ばれています。正経十四経をはじめとする経脈施術法については、各論「技術編」において詳細に述べます。