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「総合的健康美学論 その理論と展開 (第1巻)」 総論編

Ⅳ-5-3-2 活性酸素の発生の少ない運動

 「運動量の多い動物ほど早死にする」という法則は、自然界にあっても、マウスなどの実験などによっても証明されています。運動やスポーツは、日常生活より多くの酸素を必要とします。それだけ活性酸素も多量に発生し、身体の酸化が進むことになります。一方では、年齢とともに抗酸化力は確実に低下していきます。したがって、抗酸化能力や免疫力の高い中年までは、運動やスポーツでしっかり身体を鍛え、十分な体力をつけておくことが重要です。しかし中年以降は、その体力や筋力をできるだけ低下させないようなストレッチングや体操、ウォーキングなどに、徐々に切り換えていくことが肝要です。健康維持や増進のために取り入れた運動が、活性酸素によって気づかないうちに蝕まれては、何の意味も持たなくなります。

 活性酸素を発生させない運動としては、準備運動としての体操やストレッチングと、ウォーキングなどが最適です。とくに普段より少し早めのウォーキング(分速100~120m)は、理想的といわれています。準備運動としての体操やストレッチングとウォーキングなどについては、運動編で詳細に述べます。

 私たちが生命を維持していくために必要な最低限のエネルギー消費量を「基礎代謝量」といいます。平均に基礎代謝量は、女性より男性のほうが10%程度高いといわれています。さらに、男性ホルモンは新陳代謝を亢進する作用があるので、男性は活性酸素の影響を受けやすいことになります。逆に、女性ホルモン(エストロゲン)には、ビタミンEと同様の抗酸化作用があるため、男性に比べて活性酸素の影響はより少なくなります。このように活性酸素の影響度の違いが、男女の寿命の差となって現われています。運動の基本は、健康維持のためです。運動量や運動強度より、むしろ「身体にやさしい運動の質」についての根本的な見直しが必要といえます。
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