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「総合的健康美学論 その理論と展開 (第1巻)」 総論編

Ⅳ-3 活性酸素の功罪

 活性酸素は、体内に侵入した病原菌や異物に対して、強い酸化力で攻撃する免疫機能の中心的役割を果たしています。その代表的なものとして白血球とリンパ球があげられます。リンパ球の一種であるナチュラルキラー細胞(NK細胞)は、骨髄で産生されますが、がん細胞を発見すると、ただちにOHラジカルを生成してがん細胞を攻撃します。その主要な武器として使用されるのが活性酸素です。また、肝臓における解毒作用やホルモンの生成にも活性酸素が関係しています。抗がん剤や放射線によるがん治療も活性酸素を発生させ、その酸化作用によってがん細胞を破壊しようとするものです。

 一方、三大成人病と呼ばれ死因の上位を占めるがん・心臓病・脳卒中をはじめ、糖尿病・白内障・痴呆症・肝炎・腎炎・痛風・肺気腫など、感染症を除いた病原菌によるあらゆる疾患のほとんどの発症に、活性酸素が関係していると考えられています。さらに老化が進み、抗酸化能力が低下すると、活性酸素の毒性はさらに増し続けることとなります。

 ここで、三大成人病に対する活性酸素の具体的な関わりについて考えてみます。例えば体内に発生した活性酸素によってDNAが傷つけられると、遺伝子や染色体に突然変異を招きます。これが発がんの主要な原因の1つとなっています。また、心臓の不整脈など、いわゆる虚血性心疾患といわれる一時的な血流の停止現象が起きると、再び血液が流れ出すときに多量の活性酸素が発生します。このとき組織を著しく傷つけるため、心筋梗塞へと進む原因になるといわれています。脳は他の臓器に比べて酸素の消費量が高いため、血管が活性酸素による障害を受けやすく、脳卒中や脳浮腫の原因になりやすいといわれています。


 さらに環境的・外部的因子による活性酸素の増加も見逃せません。工業や自動車の排気ガス、農薬、食品添加物、電波・電磁波・超音波、アルコール、タバコおよび精神的・身体的ストレスなどは、すべて活性酸素の重大な発生原因となっています。

 人は生きるため摂取した栄養を、酸素を使ってエネルギーに変換しなければなりません。一方では、その過程で発生した活性酸素に傷つけられながら日々老化が進んでいます。活性酸素が功罪相半ばの両刃の剣といわれる所以が、ここにあるわけです。動物は酸素を取り入れて、二酸化炭素を排出します。植物は、その二酸化炭素を取り入れ光合成によって酸素を放出します。動物と植物は、お互いの排気を利用し合いながら、共生関係を形成しているわけです。この意味で地球は1つの生命体となっています。

 光合成によって二酸化炭素を酸素に還元している植物にとって、活性酸素の害を避けることは死活問題です。このような植物にとって葉緑素は、光合成に必要なためだけではなく、活性酸素に電子を与えて、自らの酸化を防ぐ抗酸化システムの役割を果たしているわけです。
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