Ⅳ-5 抗酸化システム
光合成によって酸素を多量に発生させる植物には、葉緑素(クロロフィル)の働きによって活性酸素の攻撃を防いでいます。人間は、酸素呼吸という代謝法を活用する好気性の生物から進化したので、植物と同様に活性酸素の攻撃を防御するシステムを備えています。それは「スカベンジャー」と呼ばれる「抗酸化物質」の働きです。スカベンジャーは、次の3つの防御作用を有しています。
(1) 活性酸素が発生しないように、その発生源を抑える作用
(2) 発生した活性酸素の働きを抑える作用
(3) 活性酸素によって被害を受けた部分の修復や再生の作用
Ⅳ-5-1 抗酸化物質の種類とその概要
活性酸素を防御するスカベンジャーには、私たちの体内で作られるものと、食品など体外から摂取するものがあります。それらは、
(1) 酵素
(2) ビタミン
(3) その他の抗酸化物質
などの3種類です。
酵素は、体外から摂取することができないスカベンジャーで、すべて生体の細胞内で作られます。酵素はたんぱく質の化合物で、さまざまな代謝に関与しています。酵素はそれぞれ1つの働きしかしないので、体内では3,000種類にものぼる酵素が合成されています。酵素の合成には、ビタミンやミネラルなどの「補酵素」が必要となります。酵素のスカベンジャーには、スーパーオキサイドジスムターゼ(以下SOD)、カタラーゼ、グルタチオンぺルオキシターゼなどがあります。
ビタミンは、体外から摂取するスカベンジャーの代表的なものです。ビタミンC、ビタミンE、ビタミンB群などがあげられます。その他の抗酸化物質には、β-カロテンやアスタキサンチンなどのカロテノイド、カテキンやケルセチンなどのポリフェノールなどが知られています。また、マンガンやセレンなどの微量ミネラルにも抗酸化物質としての作用があります。