Ⅲ-6-2 食事療法(栄養摂取)の3原則
食事療法(栄養摂取)の基本となる原則は、3by3理論の項で述べた通り、「適質・適量・適熱量」などです。理想的な摂取エネルギーバランスへと食習慣を改善するためには、「エネルギー代謝の基本」や「栄養の成分別食事管理」のあり方、さらに「エネルギーコントロール食」などについての知識を深めることが重要です。
Ⅲ-6-2-1 栄養とエネルギー代謝
日常の食生活から摂取した栄養素は、代謝によってエネルギーを発生させます。これらのエネルギーは、脳神経・筋肉・内臓などの活動や、体温の維持などに使われます。このようなエネルギー収支の過程をエネルギー代謝といいます。エネルギー代謝の単位は、14.5 ℃の水1gを1℃上昇させる熱量を1cal、その1,000倍を1kcalとして表します。摂取された栄養素が、体内でエネルギー源となるものは、糖質・脂質・たんぱく質の3種類です。これらは、三大栄養素と呼ばれています。
摂取した栄養素から体内で作られたエネルギーは、呼吸・循環・消化・吸収・体温保持などの生命活動や日々の生活活動に使われます。言い換えると、食物の化学的エネルギーを体内で機械的・熱的エネルギーに変換して活動しているわけです。
食物から摂取したエネルギーの総量と、消費エネルギーの総量がおおむねバランスのとれている状態を、「エネルギー平衡の状態」といいます。これに対して、摂取過剰の栄養素は、
(1) 脂肪は脂肪として蓄積されます。
(2) 糖質はブドウ糖を経て、グリコーゲンと脂肪として蓄積されます。
(3) たんぱく質はアミノ酸を経て、グリコーゲンと脂肪として蓄積されます。
これらの蓄積されたエネルギーは貯蔵エネルギーとなります。グリコーゲンとしての貯蔵エネルギーは、肝臓の重さの2~8%程度、筋肉重量に対して0.2~1%程度と比較的過小な量のため、ほとんどの貯蔵エネルギーは、脂肪として貯蔵されることとなります。
消費エネルギーに対して、摂取エネルギーが過剰な状態が続くと、脂肪が過剰に蓄積して肥満状態になります。逆に消費エネルギーが過剰な状態になると、体内の貯蔵エネルギーが使われます。最初は、グリコーゲンが分解されてブドウ糖となって使用されます。次に、体脂肪が遊離脂肪酸とグリセロールに分解されて使われます。さらに消費エネルギーの過剰な状態が続くと、活性組織のたんぱく質が崩壊してアミノ酸となり使われることとなります。