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Ⅰ 理論の概要
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Ⅰ-1 定義および目的
総合的健康美学論(Synthetic Coordination for Beauty Health)とは、
(1) 心身ともに健康な、
(2) 固有美の真価に気づき、
(3) その維持・増進をはかるための、
(4) 総合的な援助理論および援助技法であり、
(5) 自己美の探究と発見のための科学です。
この半世紀の文化や生活水準の向上は、数十万年に及ぶ人類の歴史をはるかに超える変革をもたらしてきました。その影響は、食生活や生産技術などの向上にとどまらず、社会構造や人間関係の有機的な発展に大きく貢献してきました。しかし一方で、社会構造や人間関係は、急速に多様化・複雑化して、多大の社会不安や数々のストレスを招く原因となっています。このことは、私たちの生存に重大かつ深刻な影響を与えている成人病の増加動向に、見事に一致しています。
成人病は現在では、「生活習慣病」と呼ばれ、つねに疾病による死亡要因の上位を独占している状態にあります。生活習慣病は、社会や文化の狭間で、本来の健康美を阻害し続けています。豊かな生活や人間性の獲得が、動物としての生体に必要な最小限度の条件までも、侵しつつある現実に直面させています。
総合的健康美学論では、生体の健康に支えられた本来の美を「美の恒常性」と呼んでいます。したがって、美の恒常性の獲得と維持の基盤となる理論や技術、さらに、東西の医学的・美学的知識の基礎を学び、技術の研究や研鑽に寄与することをめざしています。
言い換えると、「総合的健康美学論」とは、豊かさのなかで見失われつつある健康美の本質を見直すことが原点となります。また、心・身体・自己実現意識などの総合的な体質改善が必要となります。そのための総合的な援助技術の完成と、その普及が使命といえます。
Ⅰ-2 3つの美と、その恒常性
総合的健康美学論の希求する「美の真価」は、次の3つの美によって構成されます。3つの美とは、
(1)「真美」
(2)「心美」
(3)「身美」
などです。「真美」とは、その人だけの、その人特有の美しさであり、固有美・個性美などといわれるものです。「心美」とは、年齢や性別、立場や役柄、それぞれの状況や場面などに応じた、人としての心の美しさや、心のあり方です。「自己肯定感」や「自己有能感」などによって支えられます。「身美」とは、身体そのものの美しさです。容姿・スタイル・肥満度などから、肌の状況、さらに、細胞や血液、爪や髪の毛、歯などの素材の美しさも含まれます。
これらの「3つの美」のもつ新たな活力を引出し、気づき、さらに高め、味わい、楽しむことが重要です。また「3つの美」から与えられる「自信ややる気」は、「自己肯定感」や「自己有能感」へと成長します。
これら「真美」「心美」「身美」などの3つの美しさが、最良の状態に維持されることを「美の恒常性」といいます。
生体の恒常性(Homeostasis)は自律神経系・内分泌系・免疫系などのトライアングルによって維持されています。
同様に、「美の恒常性」も「真美・心美・身美」などの3つの美の三角形が(Homeostasis triangle of beauty)によって健康美が維持されます。これが本物の美しさであり、「美の真価」です。