Ⅳ-4-9 ストレス
ストレスによって興奮したり緊張すると、自律神経の中の交感神経が刺激され、副腎皮質ホルモンが分泌されます。これはストレスに対抗するためのホルモンで、心身の緊張状態を高める働きをします。一方では、この緊張状態をやわらげるため、副腎皮質ホルモンを分解するアミン酸化酵素が分泌されます。これを抗ストレスホルモンといいます。抗ストレスホルモンの生成や分解の過程では、多量の活性酸素が発生します。
ストレスによって緊張している状態では、血流は悪くなります。しかし、緊張状態が緩和されると、即座に血流が改善されるため、血中の酸素量が増加します。当然活性酸素の量も急増することとなります。したがってストレスが解消・緩和された直後には、多量の活性酸素が発生します。
強いストレスがかかると、カテコールアミンというホルモンが分泌されてストレスに対抗しようとします。一方でカテコールアミンは、血糖値を上昇させる作用があるため、ストレスが継続すると、糖尿病の原因ともなります。また、ストレスは動脈硬化の原因となり、心臓病や脳卒中などの血管性障害の主要な危険因子でもあります。
Ⅳ-4-10 運動
運動は、その運動強度に比例して酸素の摂取量が増加します。無酸素運動のような激しい運動では、それだけ多量の活性酸素が発生することとなります。運動と寿命の関係については、「運動量の多い動物ほど早死にする」ということが、ハエやマウスの実験でも証明されています。
活性酸素によって身体が酸化するということは、病気や障害・老化を促進するということです。そして酸化に対抗する能力を抗酸化力といいます。通常、抗酸化力は加齢とともに低下します。運動によって身体を鍛えることは重要なことです。しかし抗酸化力の低下する中年以降は、激しい運動を控えることも重要なことといえます。
無酸素運動のような激しい運動を行うと、筋肉に血液が集中的に集まります。このとき内臓は血液があまり流れない状態、いわゆる虚血の状態になります。しかし、運動を終えると、筋肉に栄養や酸素を送っていた血液が内臓に戻ってきます。この再環流によって、多量の活性酸素が発生します。激しい運動は、呼吸による多量の酸素と、血液の内臓への再環流によって発生する二重の活性酸素をもたらします。
しかし、ウォーキングに代表される有酸素運動であれば、活性酸素の発生が微量となります。そのため身体への影響はほとんどないとされています。しかもこのような有酸素運動の習慣の定着している人は、活性酸素を無害化するスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)の活動が、活発になることが明らかになっています。効果的なウォーキングの実施要領については、運動編で詳細に述べます。