Ⅳ-4-5 大気汚染
工場の煤煙や自動車の排気ガスなどによる大気汚染も、現代人に錆びをまき散らす大きな要因となっています。煤煙や排気ガスは、窒素酸化物であり、体内に入ると、多量の活性酸素を発生させて攻撃します。大気汚染の進んでいる地域では、肺がんや喘息などの呼吸器系疾患が多いのはこのためです。肺がんの主要な原因といわれた喫煙が、減少傾向にもかかわらず、この数年肺がんの死亡者が急増しています。
また、肌の保湿を担っている角質層は、肌の表層部分にあるため、窒素酸化物による大気汚染の影響を受けやすいといわれています。したがって工業都市や大都市部などの大気汚染の進んでいる地域では、アトピー性皮膚炎にかかる割合が高いとされています。
Ⅳ-4-6 紫外線
紫外線は波長が可視光線より短く、放射線より長い光線で、目で見ることはできません。紫外線にはUVA、UVB、UVCの3種類があります。UVCは最も破壊力が強い紫外線といわれていますが、オゾン層で反射し、地球には届きません。UVAは、皮膚の奥深くに浸透して突然変異誘発性の過酸化物の生成を促進することが明らかになっています。UVBは、皮膚の表層部分に働いて日焼けの原因となります。
紫外線によって発生した活性酸素により、肌が攻撃を受けると黒く日焼けします。肌の細胞を守るため、言い換えると肌の酸化を防ぐため、アミノ酸の一種であるチロシンが代わりに酸化され、その結果できるのがメラニン色素です。このメラニン色素には、紫外線を吸収・拡散する作用があります。通常黒人や黄色人種に比べて白人は、メラニン色素が少ないため紫外線の影響を受けやすく皮膚がんの発症率が高いとされています。通常メラニン色素は、紫外線によって発生した活性酸素の攻撃が収まると、新陳代謝によって角質層からしだいに取れてしまいます。しかし、メラニン色素が除去されずに残った状態が「シミ」といわれるものです。
長期間もしくは繰り返し紫外線を浴びると、皮膚の土台ともいえるコラーゲンやエラスチンが紫外線によって発生した活性酸素によって酸化されてしまいます。これが「シワ」の正体です。コラーゲンは、通常ひも状の繊維で整然と並んで肌の張りやつやを保っています。酸化されることにより繊維の数は減少し、配列は乱れてしまいます。エラスチンは、肌に弾力や伸縮力を与えていますが、酸化されるとその機能を失い、シワを定着させてしまいます。
紫外線は、寝具の日光消毒や殺菌、ビタミンDの生成などの効用も重要です。したがって、骨軟化症や骨粗鬆症の予防のためカルシウムとビタミンDの摂取と、適度に紫外線を浴びることも必要です。しかし一方で紫外線は、一重項酸素を発生させ皮膚がんの原因になるともいわれています。