近江地方に本拠地をおく、地方への稼ぎ商人であった近江商人は「三方よし」の考えを説いていました。(近江商人とは、主に鎌倉時代から江戸時代にかけて活躍した近江国(現在の滋賀県)出身の商人たちをさしています。)
近江商人の行商は、他の地にゆき商売をし、開業をしながら生計を立てることを生業としていました。そのため、その地方の人々の信頼を得ることが何よりも大切なことでした。そこで商人たちの基本の心得となっていたのが「三方よし」の考え方です。
「三方よし」とは、売り手よし・買い手よし・世間よしを表しており、商売に絡む全ての取引は、当事者だけでなく、世間のためにもなるものでなければならないということを説いています。そしてこの商法により、当時江戸っ子商人たちの妬みを尻目に、近江商人たちは大成功を収め、これは現在の契約ホテルのはしりとも言われ、流通革命だったとも評価されています。
この心得は、現代社会に生きる私たちの商売の仕方にも共通していると思います。今も昔も変わらず大切なものは「信頼・信用」です。そして信頼のもとになるものは「誠実さ・正直さ」ではないでしょうか。
健康や美容という産業は目に見える物を商品としている場合ばかりではありません。時には目には見えないけれど、何にも変えがたい素晴らしいものを提供することもあります。それは、健康になった身体であったり、コンプレックスを克服した心などです。
しかし目には見えない分、何より誠実さが求められます。そして目には見えなくともきちんとした結果という商品を提供しなければなりません。
近江商人の「三方よし」の心得に則り、売り手だけ利益を得ようとするのではなく、買い手も利益を得られるだけでなく、世間からも必要とされ、また高く評価されるよう務めることが最も求められていることです。そして何より、お客様に誠実に対応し心からの信頼を得られるよう努力することが必要です。
良い商品を提供し、良い接客で心を掴み、良い企業として社会に存続し続けることが、この健康・美容産業の発展にとって大きく寄与することは言うまでもありません。
「三方よし」の商法でこの産業をさらに発展させていきましょう!
国際健康美学会 専務理事 村山 舞