11月2日(月)に、『食生活と運動指導の基礎知識』というテーマで教育研修会を開催しました。受講者は100名以上。そのほとんどがエステティシャンの方々です。
講師は、神奈川県立保健福祉大学 保健福祉学部栄養学科 教授の鈴木志保子先生です。先生は管理栄養士であり、スポーツ栄養学の第一人者である先生は、2008年の北京五輪で日本女子ソフトボールチームの栄養サポートや指導を手がけられました。まさに、金メダル獲得を「食」の面から支え続けた影の功労者です。 鈴木先生の軽快なテンポとユーモアにあふれたお話に受講者の皆様がだんだんと引き込まれていき、後半は笑い声が上がるほど楽しい雰囲気の研修会となりました。 今、私達の周りには、生活習慣病予防や健康になるための情報はたくさんありますが、その情報が正しいのか、また自分にとって必要なのかは私達が自分で判断しなくてはなりません。正しい判断をして身体を自己管理していくには、さまざまな知識と自分の身体をしっかりと把握することが不可欠と先生はおっしゃいます。 その第一歩として先生が提唱しているのが、「朝一排尿後の体重測定」です。もちろん、体脂肪も同時に測定できればベターです。毎朝の体重を記録することは、体重の増減に敏感になり、前日の食事内容や時間、身体活動量など生活全体を振り返り、食生活をコントロールしていくのにとても重要だとおっしゃいます。 さらに、食事内容や時間をまず1週間記録してみると食生活の改善ポイントがみつかるそうです。例えば、麺類やカレー、丼物は、満腹中枢が感知する前に食べ終わることが多いので、食べ過ぎや早食い防止のためにも食事時間を意識することは重要だという話には説得力がありました。 このようにして実際の食事記録を元に分析すると、食事に対する思い込みや思い違いに気づくことができます。それに加えて、歩数計をつけて活動量を記録することで、一日を通して自分がどのくらい活動しているかという身体活動量を把握することができます。 健康のためにウォーキングを日課としている人は多いですが、ちなみに1時間普通に歩いて消費するエネルギーは体重の2倍のカロリーで、速歩だと3倍のカロリーを消費するそうです。 感覚的にはもう少し消費するのではと思っていたのですがこれは意外でした。スポーツクラブに行って運動して汗をかくと、実際に消費したエネルギーは大した量ではないのに、今日はいいだろうと思ってその後、食べたり飲んだりしてしまう。それが度重なって結局太ってしまうということがよくあるそうです。 実際に起きていることと自分が思っている感覚やイメージとはギャップがあり、そのギャップが積み重なった結果、不健康な状態を招いてしまっているということです。 ここに気づくことがとても大切だと先生は教えてくださいました。 最後に先生は、「無意識で行っていた行動を意識化し、意識した行動を無意識にできるようにする」ことこそ、鈴木志保子の行動変容の考え方であるとおっしゃいました。 今までエレベーターを使っていた人が意識して階段を使うようになり、そのうちに無意識に階段を使うようになる。また、刺身を食べるときに無意識に両面に醤油をつけていた人が、塩分取り過ぎを意識して片面だけにつけるようにしているうちに、無意識にそうするようになる。こういうことが行動変容であり、日常のちょっとした習慣を見直すことこそ、健康になれる近道です。 栄養指導は人を救うこともできるし、その逆もある。正しい知識をしっかりと身に付けて、今日の講義の内容を皆さんの仕事に役立てていただきたいと力強く締めくくられました。 鈴木先生の食生活と運動指導への情熱と魂のこもった2時間の講義はあっという間でした。内容もすばらしいものでしたが、何よりも鈴木先生の温かい人柄に魅せられ、受講者の皆様も大変満足された様子でした。
2009.11.2
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