コーチングってどんなもの?というところから学ぼうというセミナーを開催しました。

 興味はあるものの、実際には内容をよく知らないという方も多く参加されました。そこで、講師の梅本和比己先生は、講演が始まった途端、突然、皆さんに、手の親指と人差し指でOKのサインを作ってくださいとおっしゃいました。

 いったい何が始まるのかと皆さんが不思議な顔をされたところに、「それでは、その手を顎に当ててください。」と言いながら、先生はほっぺたに当てました。
 先生の動きを見ながら、手を動かしていた受講者の全員が、何と先生と全く同じ動きをしたのです。
 つまり、言葉では「顎に」と言っているのに、手は「ほっぺたに」動かしたのです。
 これは、見ていてとても面白かったです。
 先生が解説した途端、皆さんの顔に照れ笑いの表情が見えました。

 言われていることを聞いていたはずなのに、身体の動きはそれと違った動きをしたということです。先生によると、非言語的なメッセージがいかに人に影響を与えるかを示す例とのことでした。

 良いコミュニケーションをとるために役立つのが、コーチングの「聴く」、「質問する」、「伝える」の3つのコアスキルです。

 今回のセミナーの中で特に印象に残ったのは、「聴く」ためのスキル「ペーシング」です。
 人の性格は十人十色。ゆっくりとした性格だったり、せっかちだったりといろいろです。では、ゆっくりとした性格の人と話をする時に、こちらが矢継ぎ早に質問をしたり、答えをせかしたりしたらどうでしょうか。
 最初のうちは一生懸命に答えてくれるかもしれませんが、だんだんと「この人は本当にきちんと自分の話を聞いてくれているのだろうか?」と、心を開くどころか、逆に不安になってしまうかもしれません。そこで必要になってくるのが、相手に合わせていくというペーシングです。

 ペーシングの活用は、お互いの防衛意識を取り払い、協力関係を築きたいという意思表示です。相手に合わせることで、安心感と信頼感を作り出します。

 では、相手とペースを合わせるにはどうしたらいいのでしょうか?
 この相手とペースを合わすペーシングには、ヴァーバルといって言葉を伴うものと、ノンヴァーバルの言葉を伴わないものがあります。

 言葉を伴うペーシングには、あいづちや言葉の繰り返しがあります。あいづちをうつことで、相手の話をしっかりと受け止めているというサインを出すことができますし、また相手の話を繰り返すことで、相手の話を確認し、「ちゃんと聞いていますよ!」と伝えることができるのです。

 また、ノンヴァーバルではうなずきや声のトーンなどがあります。相手の話を聞きながらうなずくことや、相手の声が低い場合にはこちらも低めのトーンで、また、相手が高めならこちらも高めと合わせることもペーシングです。
 どちらにしても、相手が気持ちよく話ができる状態を作ることが大切なのだということなのです。話を聞き、相手も安心して話をしていくと、自然と相手と心を合わせることができるようになっていく。そして心を合わせることができることで、相手も心を開いて本音をぶつけてくることができるようになっていくのです。
 あいづちやうなずきなど、何気ないことですが、意識して周りの人のペースを感じてみて、ペーシングをしてみると、今までとは違ったその人の一面が見えてくるかもしれません。

 二人の方に出てきていただき、実際に話をしていただきました。
 まずお二人が共通に好きな食べ物がアイスクリームだということがわかりました。
 お一人がいかにアイスクリームが好きかということを話す時に、相手の方は話し手の目を見て、うなずきながら話を聴きます。

 次に、同じ話をする相手に向かって、今度は視線を合わせず下を見ながら、言葉だけで「そうですか」頷いてもらいました。

 その後に、話し手の方にどんな気持ちになったかを聞くと、案の定、相手が自分の話をきちんと聴いてくれていないことに寂しさを感じたとおっしゃっていました。

 こうしてみると、自分ではしっかりと相手の話に耳を傾けているつもりなのに、ちょっとした視線や聞く姿勢で、実は相手にはそう映っていないことがあることをわかりやすく教えていただきました。

2013.2.9