日本臨床・公衆栄養研究会が主催する講演会で、現役精神科医の奥田弘美先生が講師を務め、「メディカルサポートコーチング ~より良い医療コミュニケーションのヒント~」というテーマで講演されました。
「メディカルサポートコーチング」とは、コーチングというコミュニケーション法を中心として、接遇学、カウンセリング学、ファシリテート・スキルなどの要素を加えながら医療現場向けのコミュニケーション法として奥田先生がまとめたものです。医療現場をサポートするコーチングであることから、「メディカルサポートコーチング」と名付けたそうです。 興味深かったのは、奥田先生自身が究極のコミュニケーション下手であったというお話でした。先生によると、研修医の頃から、患者さんとの応対からスタッフとの関係に至るまで数限りない失敗を幾度となく繰り返してこられたそうです。今の先生からは信じられないのですが、当時は人見知りが激しく口下手で、初対面の人と会話することが苦手で、多くの方と接する医師という職業が苦痛だったそうです。そんな毎日を過ごしていたある日、コーチングというコミュニケーション法に出会ったことが、「メディカルサポートコーチング」法を考案するきっかけだったという話はとても印象的でした。 医療や介護の現場にありがちな指導コミュニケーションのパターンは、指示命令型、脅迫型、アドバイス型が多く、この3つのパターンは、自分の考えを先に提示してしまっていることが共通の問題点だそうです。 大事なことは、自主性の大切さです。 つまり、他人の意見では、本当の力強いやる気や行動が起きにくいこと。 そして、自分が選んだ、決めたという責任感を持ちにくいという特徴があるというのです。 講演の中では、実際の場面を想定して医療従事者と患者役をご参加者が演じました。学んだスキルを使い、その効果を体感することでそれぞれが納得した様子が伝わってきました。 最後に先生がおっしゃったのは、スキルは気持ちを入れて温かい心で、そしてアイコンタクトと笑顔を添えて使うということでした。コミュニケーションは自分から始めるものという言葉で締めくくられました。
2012.9.29
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