2014年9月1日(月)に、学士会館(東京・千代田区)にて、『セラピストに今求められる知識と技法』をテーマに、第11回学術教育研修会を開催しました。






講演 『 健康美のための姿勢と動き 』

早川 洋子
  東京国際大学人間社会学部人間スポーツ学科准教授
  医学博士


 早川洋子先生による「健康美のための姿勢と動き」の講演を伺い、良い姿勢は美しさや健康にもつながっていて、正しい姿勢こそが健康美の基本であることを実感しました。

 正しい姿勢、良い姿勢には、
   1.外見の印象を左右する→変えやすい
   2.美しいボディーラインづくり
   3.けがを予防したり、疲労しにくいなど、様々な動作に影響を与える
   4.腰痛を予防する
   5.内臓への負担が少ない
   6.若さやエネルギーなど、年齢を反映する
 このような良い効果があるそうです。

 そして、会って2~5秒で決まると言われる第一印象をアップする効果もある美しい姿勢は、特に人前に立つお仕事をされている方であれば、とても大事なポイントですね。

 ところが、その良い姿勢をキープすることは難しいことでもあります。

 身体の片側だけ使う姿勢をとるくせによって、身体が歪んでいることも多いようです。
 例えば、日常の動作でいうと…
   ・足を組む時、上にする足が決まっている
   ・床に横座りをするとき、左右どちらかに足を出すかが決まっている
   ・かばんや買物袋を持つ手が決まっている
   ・横を向いて寝る時、右向きか左向きかが決まっている
 などです。

 さらに、現代は、生活の便利さゆえに、骨や筋肉が衰え、重力に対して無理のない直立姿勢(良い姿勢)がとれない人が増えています。

 それにより、ダメージを受けやすいのが「腰」です。
 今や、日本人の健康寿命を阻害する要因の2番目が「腰痛」だそうです。

 脊柱は、背部の壁と腹圧に支えられて保護されており、それは自然のコルセットの効果があるそうです。
 つまり、日頃から意識しておなかに力を入れておくことが、たるみのない美しい姿勢を保つことにつながるということです。



 講演の中で、実際にO脚の矯正法を教えてくださいました。
 両手を前に伸ばし、両足を揃えてまっすぐに立ちます。適当に折りたたんだバスタオルを両ひざの間に挟みます。そして、背筋をまっすぐに保ちながら、90度の角度まで、ゆっくりとスクワットを行います。8回程度でOKです。
 確かにモデルさんの足の形に変化が見え、参加者の皆様からは声が上がりました。先生によると、一過性のものではありますが、根気よく2種間ほど続けていると自分のものになるそうです。
 意識一つで、常に美しい自分でいられるなんて素敵なことですね。
 ぜひ、実践して美しい姿勢を手に入れたいものです。



研究発表 『 韓国の皮膚美容師国家資格制度に関する研究 』

郭 眞瓊
  仁川才能大学校美容芸術科教授
  理学博士


 郭眞瓊先生には、韓国で国家資格として認められているエステティックの資格の実態について詳しく教えていただきました。

 韓国では、2008年1月1日より国家技術資格法による美容師資格が、一般美容師と皮膚美容師(エステティシャン)に区分されました。それに伴い、同年10月5日に実施された第1回目の皮膚美容師国家試験は、スキン・エステ市場の拡大を見越してか、予想を大きく上回り15万人が受験したそうです。皮膚美容師の需要の増加も相まって、その後も資格取得者の数は安定して増加しています。2013年の国家技術資格統計年報によると、2012年に韓国の35歳~44歳の女性が取得した上位10種類の資格の中で、皮膚美容師が23.9%、一般美容師が22.4%と、共に高い取得率を示しており、人気のある資格であることがわかります。

 続いて、皮膚美容師の定義や試験内容、受験人数・合格率、免許取得後の効力について説明していただきましたが、郭 眞瓊先生は最後に、韓国における皮膚美容資格試験の専門化・現実化の必要性を強調されました。現状の科目に加えて、美容サービス学や機器管理の科目を追加すること、また現場の活性化を考慮し持続的な検証と改善法案が必要と述べられました。

 そして、ドイツなどの先進国の資格制度を参考にして、量ではなく質の高い専門性を持ち現場に適した皮膚美容師の養成を通して、皮膚美容師の社会的地位の向上を願っていると締めくくられました。









講演 『 望ましいセラピストのあり方とテクニック 』

村山 舞
  昭和大学医学部薬理学兼任講師
  医学博士
  株式会社村山代表取締役


 少子化が社会問題となっている今日ですが、同時に平均寿命の延びによる高齢者の健康維持、医療費の増大などの問題も深刻さを増しています。
 我が国にとって疾病の予防は重要な課題であり、エステティックに通うことで健康的に痩せることができれば、エステティシャンも生活習慣病の予防や健康維持に貢献できるはずです。

 エステティシャンは、国家資格がなくても従事できる仕事です。そのために、これまでは仕事に必要なスキルや標準的なレベルというものも、あまり明確ではありませんでした。

 村山舞先生の講演は、エステティシャンの仕事をもう少し広くとらえ、ヨーロッパでいうところのセラピストとして位置づけて、これからのあり方を問いかけるものです。

 村山先生は、ビジネスの領域に普及している「コーチング」を、エステティシャンのテクニックの一つとして学ぶことで、仕事の質を高めることができると言います。

 講演では、初めてサロンを訪れるお客さまへの気持ちのよい接客や、痩身プログラムを継続するためのやる気を維持するために、コーチングをどう活かしていくかについて具体的な解説がありました。




 エステティックを単なる美容の一つの仕事ではなく、健康的に美しくなることを支援できるやりがいのある職業、誇りのもてる仕事にしていきたいという村山先生の熱い思いが伝わってくる講演でした。



2014.9.1