この度、医学博士、管理栄養士としてご活躍の井上正子先生が会長の、日本臨床・公衆栄養研究会が主催する講演会で、幣学会の事務局長 梅本和比己先生が講師を務めました。
 「栄養指導と日常生活にいかすコミュニケーション技法」というテーマで、集まったのは、会員の栄養士の方々を始め、身体に良い水や油、食材等を扱う業者の皆様です。

 講師の穏やかな口調で始まった講義は、終始和やかな雰囲気で進行しました。

 栄養指導の場面でよく見られるパターンとして、
  1 指示命令型
    「~しなければならない」「~してください」
  2 脅迫型
    「~しなければ、大変なことになりますよ」
  3 アドバイス型
    「~したほうがいいですよ」「~したらどうですか?」
 の3つを挙げられました。

 指導者として、患者さんに変わってほしいという気持ちが強ければ強いほど、熱心にアプローチをし、指導が守れない患者さんのことを、この人はダメと決めつけてしまいがちというお話がありました。

 過去と他人は変えられないものだそうです。
 相手を変えようと思うのではなく、「相手がどう受け止めているか」を考えてアプローチしていくことが、相手の気持ちをほぐし、行動変容への第一歩につながるようです。

 指導者と患者との間に信頼関係がなければ、指導効果は生まれません。信頼関係を築くためのコミュニケーションの技法が、相手の身振り手振り、呼吸や声の調子など、相手とペースを合わせる「ペーシング」や、相手の話を評価やアドバイスをしないで、相手の思考、行動、感情を受け止めながら話をよく聞く「傾聴」です。

 これは、栄養指導に関してだけではなく、上司と部下の関係、夫婦の関係、親子の関係など、様々な人間関係においても言えることです。
 途中で、二人組になり、例題をもとに質問の練習をしました。
 実習を通して学んだことも、いかに相手の側に立って考えることができるかどうかということでした。

 まずは相手の話を聴いた上で、次に相手の考えや行動を引き出す質問をし、相手のことが理解できて初めて、適切な指導ができるのだと理解できました。そして、それができてこそ、信頼される良い指導者と言えるのだと思いました。

 専門的な知識をもとに、必要と思うことを熱心に伝えれば、相手のニーズを満たすと思ってしまいがちですが、実は指導者の思い込みで相手を決めつけていることが、結果の出ない原因になってしまっているということを教えていただきました。

 ご参加者からは、今日学んだスキルを練習して、日常生活の中での家族との会話にも活用したいというご意見もあり、とても有意義な学びの時間となりました。

2012.2.18